ラブレター

二人

煙草を口に加え、フーッ。と息を吐いたが、海風に、静かに消されていった、白い煙。

木目模様の椅子に座って、海に浮かぶ燈(ともしび)を見ていた。

そんなあいは、海を見ようとはせず、背中をフェンスにつけている。

何度も思うが、そんなに携帯が好きだったんだ。と、初めて気付く。

昔なら、帰れ。と言っただろうが、今日は、そう言う訳にもいかない。

pm.22:57

先に口を割ったのは、あい。

「何で、何も話さないの?」

携帯に夢中だから。とか、もう言わない。

「あのさ、俺のアドレス消してくれない?曖昧な関係、嫌いだから。」

波音が静かに響くのは、この言葉のせいだろうか。

「嫌。」

僕は、どうしてもあいの言葉を理解できない。

別れた後に、何度も、寄りを戻したい。と言った。

しかし、その答えも同じ言葉。

そこは、うん。と、いつもの様に、そっけなくされた方が、気持ちが楽になるのに、あいは、それすらさせちゃくれない。

「俺を、コレクションにしたいんだ。」

携帯のアドレス張に、他の人と並べてほしくない。

大人になんてなれやしない。

「何で、そんな言い方するの?」

笑ってしまいそうな質問に、怒りを感じる。

いつもの僕の悪い癖。

そんな考えを追い越す、一台のバイク音。

何も言えないまま、時間だけが過ぎていく。

もう、十一時は過ぎただろうか?

さっき、吸っていた煙草を足で踏み、再度ポケットに入れていた煙草に、火を点ける。

それと同時に、自分の携帯の時計へ目をやると、眩しい光が目に飛込んできた。

pm.11:06

その行動を目にしていたあいが、タイミングよく、

「最近、あい、シンデレラなんだ。」

と言う。

意味が分からず話すと、今日は、家の門限が厳しいみたいだった。

僕と会う。と、親へ言ってくれていないことも、少し残念に思った。

「分かった。帰ろうか?」

と言って、うん。とあいが言う。

歩き始めようとしたが、僕の口からは突作に、

「ごめん。まだ、側にいたい。」

と、あいを後ろから抱き締めて、言っていた。
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