神様、僕の初恋に栄光を。
「・・・最高だな。」
午前7時35分。
東京某所にある小さな病院で、
一人の青年が小さく呟いた。
風が冷たい。
自分の人生に酷く疲れ果てた様子の青年は、皮肉めいた声を発したあと、
自分の目の前にある4メートルほどあるフェンスを前後に揺すってみた。
ガシャガシャと騒がしい音をたてるものの、かなり頑丈に造られているようだ。
自分が登ってもフェンスが崩れない事を確認して、自慢の力でフェンスをよじ登った。
「僕が何したってんだ。僕は何もしてない。そうだよな?そうだよ。」
青年は訳の分からない自問自答を何回か繰り返しながら、どんどん登っていった。
当然、誰も止めてくれることなんてない。
やけに古臭いフェンスを登りきって、
その裏に立つ。
真下には、青々と生い茂る草むらと、
少しの木があった。
青年はもうすぐ自分のいなくなるこの世界を十分見渡して、深いため息をついた。
もうすぐだ。もうすぐ楽になれる。
例え下が草むらや木でも、四階の屋上だ。ただではすまない。
忘れたかった。自分の人生を。
もし《人生リセットボタン》なんて
ものがあったら、真っ先に押すだろうに。
青年はもう一度深くため息をつき、
自分の真下にある晴れ舞台に、
飛び降りた。