なりすまし
少し長いホームルームが終わると、待ってましたとばかりに朝のメンバーが入ってきた。
「さっき何言いかけたんだよ?」
俺がそれに気づくが早いか、光希が話を促した。
俺は驚いて中途半端に椅子から腰がはみ出した状態になりながら答えた。
「いや、大したことじゃないんだけど……、昨日俺は吉井の母親も署名活動に参加していたとか言ってただろ?どうもこの論は間違っていたらしいんだ」
どうせ意味が分かるわけもない、と俺は矢継ぎ早に「なぜなら」を挟んだ。
が、息が詰まり、そこで一回言葉を切る。
その話術(?)が皆を惹きつけてしまったのか、俺は妙な圧迫感を感じていた。
「俺の母さんの話では、吉井の母親はその集まり自体を欠席していたからだ。
しかし、吉井の母親は学校からの電話のことを知らなかった。
とどのつまり、吉井は何らかの事件の渦中にいると考えてもおかしな話ではないってことだ」