なりすまし
俺はズレてしまったた腰を椅子の真ん中にすっと戻してもう一言だけ付け加えた。


「さっきのメールは……検討しなきゃ、だな」

俺の目は、光希の目とばっちり合っている。

光希は黙って頷くと、踵を返して教室に戻っていった。

他の皆はと言うと、まだ俺の周りにいた。

何だよ、と俺は視線で問いかける。

「お前は、焦ったりしないのな」

そう悲哀を含んだ口調で言うのは慶太だ。

「別に焦ってないわけじゃないが、俺たちにはまだ何もできない」

でも、と慶太は何か言いたげだったが、それを制して俺が続けた。

「吉井の母親が捜索願出して、今日からしっかり捜索は始まる。俺たちが集まったところで、出来ることはない。邪魔なだけだ。それだったら、警察にやってもらった方がいくらか安心だろ」


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