少女は偽りの恋
そこで小都音は、鼻で小さく笑う。
ツグミは驚いたように顔を上げ、戯けてみせる。
「え?何?今笑った?私軽蔑された?」
「ねぇ、知ってる…?」
小都音はゆっくりと頬杖を付く。
ツグミは嫌な予感がした。
小都音がこういった様子を見せるのは、決まって後から滔滔と説明話をする時だ。
黛小都音という少女は知識が豊富で、
時々こういった場合で自分の見解や説明を人に披露するのが趣味であり、彼女の一貫した癖でもある。
しかしそういった時の彼女に、
傲慢さや煩わしさは一切感じないので、
長い付き合いのあるツグミも決して彼女のそういった所が嫌いではない。
むしろ、時には興味津々で聞き入る時もある。
大学の年老いた頭の難そうな教授でさえ、時に小都音と楽しそうに会話しているのを見ると、ツグミはむしろそんな彼女を敬服するしかないと思えた。