俺様彼氏の甘い罠




「 泣くなら今の内だぞ、お前ら。
  卒業式では絶対に泣かさねーよ、
 親に大人になったところ見てもらえ 」




担任になったあの日からずっと
この口調で。
よく思ってない人だって居たのに
今ではこれが当たり前で、みんな大好きで。




「 別に会えなくなるわけじゃないし
  別れの挨拶をする必要もないよな? 」


「 ない!!! 」




即答した生徒に苦笑した先生が
だよな、って教卓を離れて
机と机の間をゆっくり歩いてきた。




「 お前らは本当に手のかかる奴らだし
  問題ばっかり起こすしで大変だった。
  でもまぁ、このくらいが丁度いい 」




私の隣で立ち止まった先生が
必死に泣くのを堪える私の肩に
手を回して、ぐっと抱き寄せた。




「 最高の生徒だったよ、お前ら。
  1年・・じゃねーか、2年間、
  ありがとな! 」




ふっ、と笑った先生が顔を上げた瞬間、
拍手と、泣き声と、”ありがとう”の声とで
教室内は騒がしくなった。




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