我が道をゆく
――「きゃああああああ!!」
耳をつんざくような黄色い歓声に、律は耳を塞ぎ、私は眉をしかめた。
入学して1年と少し経ったが、今だに“これ”には慣れない。というか、慣れたくない。
「……ッチ……うるさ……。」
眠くて機嫌が悪いのか、律はいつもに増して大きな舌打ちをひとつ鳴らし、首をすぼめた。
私は肩をすくめて、彼女のトレードマークである後ろの尻尾を結んでやる。はい、完成。
『毎朝ご苦労様です、と』
「他人に迷惑のかかる苦労なんざ迷惑以外の何物でもない」
無感動にそう言ってのけ、律はふらりと席を立ちあがった。どうやら、自分の席に帰るらしい。
「寝る」
『おやすみ』
どれだけうるさくても、彼女は平然と寝て見せる。私は呆れを通り越し、毎度それに感心してしまう。
例え少女たちが黄色い歓声を上げようが、先生がうるさいと怒鳴ろうが、彼女の睡眠を妨げる障害には程遠い。
かと言って、寝ている律を起こすのもまた気が重くなる作業だ。
なんと言っても、彼女の寝起きの機嫌は……最悪である。
彼女が机に戻って顔を伏せ、正におやすみ3秒の眠りを見せた頃。その悲鳴はどんどん大きくなっていった。
彼女たちの鼓膜はどうなっているんだ。
……私も恥を忍んで一緒「きゃー」とか叫んだら楽になれるかな、なんて現実逃避を試みる。
しかし、“彼ら”はそれすら許してくれないらしい。