風味絶佳~嘘からはじまる2人の関係~
「もう1つは、会社が倒産の危機にある場合です。
最もこの場合、合併というより吸収される方が高いと思いますが。
これについて、我が社が当てはまるか?
やっぱりこれもしっくりきません。
今、うちの会社は成長こそすれ、経営の危機にあるとは思えませんから。
それにそんな状態だったら、陽斗さんに社長の座を譲ろうなんて、会長ならなさらないと思います。」

「ほう・・・では、こうは考えられないか?」

そう言って、祖父が嫌な笑みを浮かべる。

「宮島コーポレーションが倒産の危機にあるのだとしたら?
我が社が相手の会社を吸収しようとしているとしたら、可笑しな話ではないだろう?」

「そうですね、それは有り得るかもしれません。
ですがその場合、陽斗さんが相手側社長のお嬢さんと結婚する必要がなくなってしまいます。
こちらの方が立場的には有利なのですから。
それに、安曇Gr.として会長が強制してまで政略結婚させようとしている程の価値が、倒産する会社にあるとは到底思えません。」

誰も何も言わなかった。

いいや、何も言う事ができなかった。

その場が静まりかえる。

ただただ、俺も含め兄弟3人は唖然とするだけ。

今だかつて、ここまで祖父にはっきりと自分の意見を言う事のできる人間がいただろうか?

祖父の顔色が、少し変化したのが分かった。

「面白い。では、聞く。
私が孫にこの縁談を進めている本当の理由は何だと?」

「それは・・・。」


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