風味絶佳~嘘からはじまる2人の関係~
「ごめんなさい。」

それでも、謝罪はしておきたいと思った。

「何の事だ?」

突然謝られて、彼の眉間に皺が寄る。

全く思い当たる節がないって顔。

「陽斗さんの気持ち、勝手に伝えちゃったから・・・。
でも、あの場合フェアじゃないかなって思って。」

だって会長の気持ちだけ伝えたら、一方通行になっちゃう気がして。

だけど彼は、もしかしたら知られたくなかったかもしれない。

「そんなこと気にしてたのか。薫って律儀だな。」

そう言って、彼は小さく笑った。

その顔を見て、少しホッとする。

「薫、俺は薫に感謝してる。
あのジイさんが折れたんだからな。
もの凄い事なんだぞ。
あの人の大きな笑い声、俺は初めて聞いた。」

彼を取り巻くオーラが、少し柔らかくなった様に感じた。

「あの時は必死で。
でも、ちゃんと自分の意見言おうって決めてたから。
内心心臓バクバクしてました。」

本当は怖かった。

逃げ出したいくらい。

でも、それをしなかったのは私の隣に彼がいてくれたから。

どんなときでも守ってくれるって言ってくれた。


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