風味絶佳~嘘からはじまる2人の関係~
好きな人にそんな風に言われて、嬉しくない人なんていない。

例えそれがお芝居だとしても。

私は彼から大きな勇気をもらったんだ。

そして、彼に幸せになって貰いたいと思った。

大好きな人と一緒になって欲しいって。

例え、相手が私じゃなくても。



気持ちの整理、ちゃんとしなくちゃね。

笑顔で彼のもとを去れる様に。


「どうした?」

急に黙り込んで下を向いてしまった私を、心配そうに気にする彼。

「何でもないです、少し疲れただけ。」

そう言って、私は彼に微笑んでみせた。

そんな私の顔を、彼は運転しながらチラッと横目で見て少し微笑む。

そして、しばらくの間彼は無言で車を走らせた。

言葉は交されないけれど、その空間はとても温かい。

だから私もそれ以上、何かを考えることを止めた。



< 111 / 141 >

この作品をシェア

pagetop