風味絶佳~嘘からはじまる2人の関係~
その間、私たちは何も喋らなかった。

つながれた手だけが、大きな熱を互いに伝える。

彼が開けたドアから私たちは玄関に入った。

後ろでドアが閉まった瞬間、私は彼の腕の中で強く抱きしめられていた。

先程とは比べ物にならない程の熱い口づけ。

そこから伝わる欲望の高鳴り。

それは長い様で短くて。

唇が離れたとき、互いに息が上がっていた。

「・・・止めるならこれが最後のチャンスだ。」

彼が私の髪をかき上げ、耳元で囁く。

今更そんなことって思う。

こんなキスしておいて。

だから、今度は私から触れるか触れないかの軽い口づけを返す。

そして、訴えかける様に彼を見つめた。

私の行動に彼は若干苦笑いぎみの笑みを見せ、降参と小さな声で呟く。

そして、私を抱きかかえてそのまま寝室へと連れて行った。

その間、私は彼の首にギュッとしがみついていた。


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