風味絶佳~嘘からはじまる2人の関係~
「川辺、私をお前と一緒にするな。」

そこに、屋敷の踊り場に低音の低い声が響き渡り、この城の主が顔を出した。

一気に場の空気が変わる。

私は鼓動が早くなるのを感じた。

「申し訳ございません。」

川辺さんは会長の言葉を否定することもなく、階段上にいる会長に向かって頭を下げる。

それを見て、会長は少しだけ右唇を上げて笑った様に見えた。

そこに威圧的なものは感じられない。

何だか楽しんでいるようにも見えた。

きっと、2人はいつもこんな感じなのだろ。


会長が今度は川辺さんから私に視線を移した。

一気に緊張が走る。

先に口を開いたのは私の方だった。

「申し訳有りません、突然押しかけて。
少し、お話する時間を頂けますか?」

私は階上にいる会長をまっすぐ見て言った。

「かまわんよ、話は私の書斎で聞こう。
川辺、後は頼む。
いいな?」

そう言って、会長は川辺さんに指示を出す。

「御意、かしこまりました。」

川辺さんは了解しましたと再び頭を下げる。

すごいな 、目を合わすだけで通じちゃうのか。


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