風味絶佳~嘘からはじまる2人の関係~
私は一度目を閉じた。

ここで怯えている訳にはいかない。

私がここに来た目的・・・。

そう、それを果たさなければならないのだから。

会長に全てを打ち明ける為に。

「私は会長に嘘を付いていました。
今日はその謝罪とお願いにきました。」

私はゆっくりと話し始めた。

「私、本当は陽斗さんとお付き合いしていないんです。
陽斗さんの縁談を阻止するために、彼の恋人であると嘘をつきました。
会長を騙してしまい、本当に申し訳ありません。」

私は深く頭を下げた。

つかの間の沈黙。

「で、お願いとは?」

最初に発したのは会長の方だった。

今話した内容を追求するのではなく、話の先を促す。

彼の表情からは何も読み取る事ができない。

「・・・図々しいお願いだと承知の上で言います。
昨日会長が仰った陽斗さんの縁談破棄のお話、撤回しないで欲しいんです。
陽斗さんを信じて、もう少し待ってあげて下さい。
彼は、必ず自分で大切な人を見つけますから。
だから、・・・。」

私は会長に訴えた。

私がそんなこと言える立場じゃない事くらい自分でも分かってる。

でも、そうせずにはいられなかった。

私の取った行動で彼が不幸になるのは絶対に嫌だから。


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