風味絶佳~嘘からはじまる2人の関係~
会長が嘘を付いているようには見えなかった。

だけど・・・

「でも・・・知っていたなら、何故縁談の話まで破棄にしたんですか?」

そう、そこが一番腑に落ちない。

「その理由は1つしかない。
私が君を認めたからだ。孫との約束だからな。」


約束・・・・・・?

やっぱり良くわからない。

彼が会長と何の約束をしたと言うの?

もっと納得のいく答えを、私は会長に求めようとした。

でも、彼は顔を横に振る。

「私から言えるのはここまでだ。
ここから先は本人に聞きなさい。
但し、その前に私から謝らせてくれ。
昨日、私は君に失礼な態度と言動を取った。
君を傷つけてしまったと思う。
申し訳なかった。」

そう言って会長はソファから立ち上がり、私に頭を下げた。

「えっ、ちょっと止めて下さい!!
私大丈夫です、傷ついてなんかいませんから!」

そんな事をされた方が困ってしまう。

それに・・・それを言ったら私だって十分会長に失礼なこと言ったと思う。

「なら、これから先もこの年寄りの話し相手になってくれるか?」

「勿論です、私なんかで良ければいつでも。」

私は思わず即答していた。

その答えを聞いて、会長がにんまり笑う。


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