風味絶佳~嘘からはじまる2人の関係~
「そうか、なら私の話はこれで終わりだ。
今度は薫さん、君の番だよ。
私に助言した様に、君こそ直接本人に気持ちを素直に伝えてみたらどうだ?
もうそろそろ到着する頃だろう。」

え・・・、何?どういうこと?

そのとき、タイミングを計ったかの様に書斎の扉が開いた。

そこにいたのは・・・。

目の前に現れた陽斗さんは肩で息をして苦しそうなのに、目は私を捉えて放さない。

顔には安堵の感情と怒りの感情が両方入り混じっていた。

「祖父さん、感謝します、連絡をくれて。」

私から目を離さず、陽斗さんは言葉だけで会長に礼を言う。


いつの間に・・・。

あっ、もしかして川辺さん?

あのときの会長の合図、そういう意味だったの??


「お前の為ではない、彼女のためだ。
今回の結果は全てお前に非がある。
大切なものは、無理やり繋いでおくのでは駄目だ。
でないと簡単に逃げられてしまう。」

「肝に銘じておきます。
もう放したりしません。」

「分かればよろしい。
薫さん、ちゃんと陽斗と話しなさい。
自分の気持ちをぶつけてみると良い。
安心しなさい、孫は誰でも良くて君を選んだ訳ではない。
陽斗がそんな人間でないことは私が保証しよう。」


「・・・・・はい。」

一応返事はしたものの、私は会長の言葉を信じていなかった。

だって・・・・。

確かに誰でも良かった訳ではないと思う。

でも、自分に本気にならない誰かだったら私でなくても良かった筈。

だからそれは、私にとって同じこと。


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