風味絶佳～嘘からはじまる２人の関係～
「だけど、陽斗さん・・・、私に言いました・・・好きになるなって。
恋人役には絶対にあなたを好きにならない人が条件だって・・・。」

「・・・ああ、確かに言った。
だが、それは初め、薫が俺のことを避けていたからだ。
もし俺があの時、薫を愛してるから結婚してくれと言っても絶対断ってただろう？」

結婚って・・・、付き合ってさえもいないのに。

そんなの、当たり前だ。

でも、だからって・・・
「・・・ちょっと極端過ぎます。
あんな風に言われたら誰だって思いますよ、相手は自分に感心ないんだって。」

「中途半端では意味がないと思ったんだ。
まず俺をちゃんと見てもらうには、その警戒心を解いて貰わないとならないからな。
それに、ああ言わないと俺の恋人役なんて君は引き受けてくれなかっただろう？」

「・・・それは、そうですけど・・・。」

「俺はあの日、会社の帰り道で君に会えた事を感謝している。
それまでは厄介事としか思っていなかったが、祖父が持ってきた縁談の話はある意味チャンスだと思った、君に近付くための。
俺は、どうしても薫を手に入れたかった。
少々強引だった事は認めるが。
会社での薫は、そっち方面に関してはもの凄くガードが固いからな。」

確かにあのときの私なら、恋人役なんて余程の理由が無い限り絶対引き受けてなかった。

まあ、その理由だって彼に乗せられただけの様な気がするけど・・・。


< 136 / 141 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop