風味絶佳~嘘からはじまる2人の関係~
何か腹が立ってきた。

結局、私は彼に初めから振り回されてたってこと??

こうなったら、簡単には引き下がってなんかやらない。

「でも、陽斗さん会長に言ってたじゃないですか?
今は独り身の方が楽だって。
誰かに縛られるなんて、まだご免だって。」

だって、本人がそう言ったんだよ。

私が初めて陽斗さんのマンションに行った日、彼本人が会長にそう言ってたのを私は聞いている。

とても衝撃的に響いてきた言葉だったから、今でも鮮明に覚えている。

「やっぱり聞かれてたのか。だが、あれはそういう意味では無い。
好きでもない女と一緒になるくらいなら、独り身の方が楽だって言う意味だ。
そもそも、好意を持つ女性と一緒にいるのに縛られてるなんて思わないだろう?」

・・・それはそうかも知れないけど。

私は頭を傾げる。

「まだ俺の言ってる事が信じられないのか?」

・・・まだ何か。

だって、・・・何かが引っかかる。

この人は、まだ私に何か隠してる。

「・・・じゃあ・・・、何故会長が私たちのこと、お芝居だって知ってたんですか?」

この事は私と陽斗さんしか知らなかった筈。

なのに・・・

「ああ、それは俺が言ったからだ。」

・・・は??どういう事??

「俺のマンションで祖父さんと薫が鉢合わせした次の日、俺は祖父に会いに行った。
そして、取引きをした。」

取引き??


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