風味絶佳~嘘からはじまる2人の関係~
「だって・・・、陽斗さんが私を選ぶ理由が見つからない。」

彼は私の返答に苦笑いした。

「薫らしい答えだな。
だが、俺は何にでも従う従順な女性を求めている訳じゃないんだよ。
自分が正しいと思ったら、そう言って良いんだ。
だから、薫を俺は好きになった。」

「・・・そんなの、物好きです。」

彼は私がそう答えると、今度は大きな溜め息をつく。

「本当に危なっかしくて放っておけない。
そこまで自覚ないと、表彰物だぞ。
薫は周りの男に自分は女性として見られてないと思ってるだろう?」

「だって、・・・それが真実です。」

実際、自分でもそう見られない様に接してきたつもりだ。

服装だって極力目立たない様に、女性と意識されない服を選んで着ている。

特に会社では、面倒臭いメモごとは御免だから。

そもそも、仕事がやり辛くなったら元も子もない。

この私の答えに、彼は先程よりさらに大きな溜め息をつく。

「良いか、薫、良く聞け。男は皆獣なんだぞ。
基本、例外は無い。
薫が自分で固いガードを張っているつもりでいたとしても、飛び越えてくる奴だっているんだからな。
俺が良い例だろう?
自分が女である事を少しは自覚してくれ。」

・・・そこで普通、自分のこと例に出す?

「一番獣なの、陽斗さんじゃないですか。
その超本人にそんなこと言われたくないんですけど。」

自分のこと、棚に上げて・・・。

「俺は良いんだ。
本気で薫のこと愛してるから。」

そう言って、彼は私の顔を覗きこんだ。

その表情は真剣そのもので。

彼に見つめられる、それだけで全身が熱くなる。


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