風味絶佳~嘘からはじまる2人の関係~
顔が強張るのがわかる。

このジジい、本気だ。

こんな馬鹿げた話に、正気とは思えない。


だが、俺は嫌と言う程知っている。

この目の前の老人がどれだけの支配力を持っているのか。


最悪の事態だ。

この状況だけは避けたかったのだが。


だが、これだけは譲れない。


「では、会長としてお話します。私は十分譲歩してきたつもりです。
あなたが勝手に急に決めた、この気まぐれな人事にもこうやって従っているじゃないですか。
しかし、今回の話は受け入れられません。
自分の結婚相手くらい自分で見つけますよ。」

どこまで勝手をすれば気が済むんだ、このジジい。

「それはいつだ?
私はお前に十分時間を与えたつもりだが?
私にはお前が身を固める気がある様には到底思えん。
もう遊びは終わりだ、お前は黙って従え。」

本性出しやがったな。

「なぜそんなに焦ってるんですか?
何も一生しないなんて言ってないでしょう。
今は、1人身の方が楽です。
誰かに縛られるなんて、俺はまだご免だ。」

愛してもいない誰かに縛られるのは。

絶対にご免だ。


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