風味絶佳~嘘からはじまる2人の関係~
今の話、聞いてたよな?
「あの・・・、すみません。
部屋で待ってる様に言われたのに・・・。」
「いや、大丈夫だ。
どいうかしたのか?」
俺は極力彼女を怖がらせない様に言葉を選ぶ。
「あの・・・お手洗いをお借りしたくて探していたら、お2人のお話が聞こえてしまって・・・。
ごめんなさい、私、立ち聞きするつもりは無かったんです。」
そう言えば、教えるのを忘れていた。
「大丈夫だ、落ち着いて。
トイレなら、その角を曲がって突き当たりだ。」
俺は少しでも彼女の警戒が溶けるよう、柔らかい口調で話しかける。
「陽斗、私にそのお嬢さんを紹介してくれないのか?」
そのとき、背後から会話に割り込む声がする。
祖父はこの状況を見逃してくれる程、寛大ではない。
そんな事は当の昔に分かっていた筈なのに。
俺は内心、気がきじゃなかった。
彼女を傷つけて欲しくない。