風味絶佳~嘘からはじまる2人の関係~
で、ここからが彼の説明。
ううん、彼の陰謀・・・。
あの日の昼、安曇さんは会長に呼び出されて見合いをしろと言われた。
相手は同種企業の令嬢。
相手の会社はうちの会社と1,、2位を争う大企業。
つまり、これは合併も視野に入れた政略結婚で、断ることのできない名ばかりの見合い。
彼はこれを断固拒否した。
話が終わる前に席を立ってしまったと言う。
でも、それが良くなかった。
案の定、会長は家まで押し掛けて来たんだから。
彼が言うには今回の縁談、会長はかなり本気らしい。
『俺は今のところ誰とも結婚するつもりはない。
増してや誰かに決められた相手なんて御免だ。』
大企業の跡取りっていうのも大変なんだなって思った。
少し同情しちゃう。
でも、次の彼の言葉で前言撤回。
『因みに、現在付き合っている特定の男性はいるのか?』
『・・・いませんけど。』
私は正直に答えた。
『なら問題ないな。香坂さん、君に頼みがある。
俺に協力してもらいたい。
恋人役として、しばらく俺の隣に居てくれないか?』
・・・恋人役。
『先に了承も得ずに行動を取ってしまったことは申し訳ないと思っている。
すまなかった。』
頭を下げる彼。
う~ん、謝られても・・・・・・。
そんなことされたら、怒れなくなっちゃうじゃない。