風味絶佳~嘘からはじまる2人の関係~
「前に設計部の打ち上げで言ってただろう。あれは確か去年の冬だったかな?」

・・・・・・確かにそんなこと言った気がする。

あのとき、かなり酔ってた新婚ホヤホヤの同じ部署の先輩に、結婚は良いぞって散々聞かされて。

その先輩は、奥さんの手料理が美味しいって得意げに自慢してた。

で、その流れでお前の得意料理は何かって聞かれて。

どうして女だからってそういう質問するのよって思った私は、そう答えたんだっけ。


でも・・・

「何でそんなこと安曇さんが知ってるんですか?」

あの時、確か安曇さんは会話の輪の中にいなかった。

「印象的だったからな。
あんなにバッサリ切る返答、久しぶりに聞いたよ。」

彼がクスッと笑う。

その態度に私は少しムッとした。

「別に、安曇さんだから料理した訳じゃないですからね・・・。
ちょっとお礼したいなと思ったから。
私のアパートもいつの間にか全部元通りになってるし。
こんなんで対したお礼になるとは思ってないですけど・・・・・・あっ!もしかして味気にしてます?
大丈夫ですよ、しないだけで出来ない訳じゃないですから!!」

ちゃんと味見したもん。

美味しいはずなんだから!!


< 39 / 141 >

この作品をシェア

pagetop