風味絶佳~嘘からはじまる2人の関係~
1.始まりは偶然に

Act1.

「専務、本日午後1時から会長との会食が入っております。
お忘れなき様願います。」

顔色1つ変えない秘書の田所が淡々と今日の予定を読み上げていく。

「・・・とうとう最終手段に出たか、あのくそ爺。
勘弁してくれ、どうせ碌な話じゃない。」

小さな声で俺は悪態を突いた。

自分の顔が引きつるのがわかる。

「その様な言動はお控え下さい。
でないと、外でもぼろが出ますよ。」

やはり顔色1つ変えず、田所は俺をたしなめた。

だが彼のその態度に、俺が不機嫌になることはない。

何故なら彼がそういう人間だと、俺は知っている。

昔からこいつは笑わない。

だが、このいつもの鉄面皮が怒っている訳ではない事を俺は知っている。

これがこいつの普通の顔だ。

「それは申し訳ない。以後気を付ける。」

俺は素直に謝罪した。


< 4 / 141 >

この作品をシェア

pagetop