風味絶佳~嘘からはじまる2人の関係~
「専務はうまくやっておられます。」

俺は田所の言葉に眉間に皺を寄せた。

こいつの言葉使い。

やっぱりしっくり来ない。

「おい、2人でいるときはその話し方止めろよ。気持ち悪い。」

少し不機嫌に俺は言った。

「それは不可能です、今は勤務時間中ですので。
あくまで、専務と秘書という関係なのですから、上下関係はしっかり付けませんと。」

「……お前、固いな。」

ちょっと非難気味に言う俺。

「何とでも仰って下さい。」

勿論そんな俺の言葉に、動じる田所ではない。

だから、俺はこいつを秘書に選んだのだから。


田所と俺は同い年だ。

大学からの腐れ縁。

俺は工学部建築科で、こいつは経済学部経営科。

田所はいつも一匹狼だった。

誰かに媚びる訳でもなく、馴れ合うこともしない。

俺にも遠慮はない。

言いたい事言ってきやがる。

まあ、だからこそ俺はこいつを信頼しているのだが。

俺にとってはそれが楽で良い。



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