風味絶佳~嘘からはじまる2人の関係~

「・・・・・・・・・。」


でも、まだ彼女は納得していない。

つかの間の沈黙が流れる。

何となく彼女の考えていることがわかった。


「勘違いしないでくれ、毎朝マンションに一度帰るのも俺の都合だから。」

だから俺は先手を打つ。

「でも・・・、私もっと周りに疑れない様に行動しますから!!
もう、この前みたいに迷惑かけない様に行動します。
お酒も控えます。
・・・だから、もっと自分のことだけ考えて下さい。
じゃないと、・・・陽斗さん本当に倒れちゃう。」

やはり、彼女は自分を責めている。

自分の行動が危なっかしいから、俺が放っておけないのだと。

だから心配して毎朝俺が彼女を迎えに来るのだと思っているのだ。


「薫は良くやってくれている、本当にこれは俺の都合なんだ。」

少しでも、薫といる時間が欲しくて。

一緒に出勤して薫は俺のものだと、周りに見せつけたくて。

全ては彼女の為なんかじゃなく自分の為。

本当に自分勝手な都合なんだ。

2人でいることを避けながら、彼女は俺のものだと誇示しようとする。

俺の勝手な都合。

笑うしかない。

都合都合って、言い訳がましい事この上ない自分に。


< 81 / 141 >

この作品をシェア

pagetop