風味絶佳~嘘からはじまる2人の関係~
「他に俺の兄弟が呼ばれている。」

俺は彼女に当日必要な情報を説明した。

「ご兄弟は何人いるんですか?」

「弟と妹が1人だ。
本当にごく内輪な人間しか呼ばれていない様だ。」

「あの・・・ご両親は?」

そう言えば、彼女にはまだ話していなかったな。

「俺が6歳の頃に2人共交通事故で死んでる。」

「・・・そうなんですか。」

2人の間に少し微妙な空気が流れた。

「そんな顔するな、俺はもう小さい子供じゃない。
そんな事で、いちいちい傷ついたりしないよ。」

「でも、当時は辛かったでしょう?
両親を同時に亡くすなんて・・・。」

「どうだったかな?それどころじゃなかったのかも知れない。
まだ、弟も妹も小さかったからな。俺が悲しんでる暇はなかった。」

思い出しても、それはとても昔のことの様に感じる。

勿論、今でも辛い出来事ではあるけれど。

「・・・そうですか。3人の面倒は会長が?」

「ああ、小さい頃から祖父は厳しかったよ。
初めの頃は反発心しかなかったな。いつも祖父に噛みついていた。
考えてみたら、そのお陰で悲しんでる暇も無かったのかもな。」

彼女がクスッと笑う。

「その光景が目に浮かびます。
陽斗さん、昔からすっごく負けず嫌いだったんですね?」

薫に言われたくないんだけどな。

自分だって相当負けず嫌いだろう?


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