風味絶佳~嘘からはじまる2人の関係~
5.決戦の日
Act1.
目の前に聳え立つ大きな屋敷。
初めて連れてこられた6歳のとき、同じ場所に立ち、恐怖心しか感じなかった。
あの頃に比べ老朽化はしているが、今でもそれは変わらない。
祖父と会うのは、そのときが初めてだった。
そして、自分の祖父が大きな会社の社長であることを俺は初めて知った。
祖父は昔から甘えを許さない、厳しい人だった。
まだ、幼かった俺には知る由もなかったが、今思うと、父と祖父はうまくいっていなかったのだと思う。
その理由は今でも分からない。
だが、現にこれまで祖父から父の話を聞いたことは一度もない。
子供心に祖父の前では絶対に両親の話はすまいと思っていたものだ。
隣から視線を感じ、俺はそちらを見た。
そこには俺をじっと見みつめる薫の姿。
彼女にずっと見られていたことに気付く。
「どうしたんだ?」
俺は優しく彼女に話しかける。
「いえ・・・、大きなお屋敷だなと思って。
陽斗さんは、ここで育ったんですよね?」
そう言って、彼女は屋敷を見上げた。
初めて連れてこられた6歳のとき、同じ場所に立ち、恐怖心しか感じなかった。
あの頃に比べ老朽化はしているが、今でもそれは変わらない。
祖父と会うのは、そのときが初めてだった。
そして、自分の祖父が大きな会社の社長であることを俺は初めて知った。
祖父は昔から甘えを許さない、厳しい人だった。
まだ、幼かった俺には知る由もなかったが、今思うと、父と祖父はうまくいっていなかったのだと思う。
その理由は今でも分からない。
だが、現にこれまで祖父から父の話を聞いたことは一度もない。
子供心に祖父の前では絶対に両親の話はすまいと思っていたものだ。
隣から視線を感じ、俺はそちらを見た。
そこには俺をじっと見みつめる薫の姿。
彼女にずっと見られていたことに気付く。
「どうしたんだ?」
俺は優しく彼女に話しかける。
「いえ・・・、大きなお屋敷だなと思って。
陽斗さんは、ここで育ったんですよね?」
そう言って、彼女は屋敷を見上げた。