風味絶佳~嘘からはじまる2人の関係~
「ああ、6歳から高校卒業までここで暮らしていた。
最近は、年に一度くらいしか帰らないけどな。
どうした、怖気づいたのか?」

俺は彼女の緊張をほぐすつもりで明るくからかった。

「いいえ、大丈夫です。」

彼女も負けじと微笑み返す。

彼女の目には迷いはない。

俺の心配など不要だったようだ。


今日の彼女は、会社にいるときとは全くの別人に変身していた。

いや、本来こちらが本当の薫なのだろう。

社内では絶対に着ることのないであろう、淡いピンクのワンピース。

ウエストより少し上に絞りがあることで彼女の足の長さを強調し、スタイルをより良く見せていた。

そして、ワンピースの上に紺のジャケットを羽織る。

靴はヒールの高い黒のパンプス。

手には控えめに、ワンピースと同色のネイル。


< 87 / 141 >

この作品をシェア

pagetop