風味絶佳~嘘からはじまる2人の関係~
俺は彼女を促し、階段を上って2階の客間の扉を開く。

そこには、弟と妹が既に来ていた。

俺に気付いた弟が駆け寄る。

「遅かったな、逃げだしたのかと思ったよ。」

そう言って俺をからかった。

だが、嫌味な感じは全くしない。

こいつは昔から人懐っこい奴だった。

いつでも集団の輪の中心にいる。

俺とは静と動の存在。

「何故俺が逃げるんだ。見損なうな。」

俺も負けじと彼を挑発する。

「だって、今日は兄貴の結婚の話だろう?
ねえ、彼女紹介してよ。」

弟はそう言うと、隣にいる薫を手の平で指した。

興味津々な態度を全く隠さない弟に、俺は苦笑する。

「彼女は設計部の香坂薫さん。
俺が今付き合ってる人だ。」

「初めまして、香坂薫です。」

そう言って、彼女は軽く会釈した。


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