風味絶佳~嘘からはじまる2人の関係~
本当はあの日からずっと心配していた。

送別会の日以降、2人の事を公にしてから社内での俺の生活には何の変化もない。

だが、彼女は違うだろう。

人間の妬みや嫉妬が恐ろしいことを、俺は知っている。

彼女の境遇を良く思わない人間も必ずいる。

別に自惚れてるわけじゃない。

俺の地位・立場とは、そういうものだ。

だが、彼女は俺に何も言わない。

言わないのは、本当に何もないのか言いたくないのか。

まあ、前者であることは極めて低いが。

どちらにせよ本人に聞かなくても調べれば簡単にわかることだ。

問題があれば、こちらから手を回すことだってできる。

だが、俺はそれをしようとは思わなかった。

きっとその行為は、彼女の自尊人を傷つけることになるだろう。

彼女はそういう人間だ。


こればかりは弟に感謝だな。

俺が聞きたくても聞けなかったことをさらっと聞いてくれたのだから。

これで彼女の気持ちはわかった。

だから、俺は彼女の意志を尊重することにする。

勿論、彼女から助けを求められたら力を貸すつもりではいるが。


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