風味絶佳~嘘からはじまる2人の関係~
生まれてこの方、こんなに頭に血が登ったことはない。

こんな人生、くそくらえだ。

ふと、強く握った俺の拳に何かが触れる。

それは、隣に座る薫の手だった。

「陽斗さん、落ち着いて下さい。
私大丈夫ですから。」

そう言って、俺の手を握る。

彼女の目に迷いはなかった。

今日、屋敷の前に2人で立ったときと何も変わらない強い眼差し。

俺は少しだけ落ち着きを取り戻す。

俺は取り敢えず、席にもう一度座り直した。

その行動を見届けてから、彼女は会長である祖父に視線を向けた。


「あの、その質問に答える前に私の意見を述べても良いですか?」

彼女の言葉に俺は少し面食らう。

薫は祖父の質問に受け答えするだけの防戦に回るのではなく、自分から意見しようとしているのか?

「構わん、言ってみろ。」

祖父もこのシチュエーションを楽しいんでいる様だった。

お手並み拝見という事なのだろう。


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