おっさんとは呼ばせない!
1●徳光SIDE
さわさわと、桃色の桜が風にゆれる。
そんな季節には、胸の鼓動も、トゥクトゥク鳴り響いていた。


…ん?


トゥクトゥクって表現は変だろうか?
正しくは…キュルキュル、とか?


家の二階の廊下でひとり悩んでいると、膝がカクン、となり、その場に崩れおちた。


膝から倒れて、頭は無害…の筈だったが、何故か同時に足がつってしまい、そのショックで顔面から床に激突した。


顔だけ、後ろを振り返ると、そこには、15歳も年の離れた妹が居た。
妹は、腰に手を当てて、一階で読んでいたらしい雑誌を手に持っていた。


「おにい!ひとりでブツブツ言うのやめてくんない?まじキモイから!
あと、トゥクトゥクでもキュルキュルでもないし!正しくは、ドキドキ!
日本語勉強したら?」


何度も言おう。
妹とは、15歳も離れている。


だけれども、妹はどう考えても俺を見下している。


…と、いうか、見下ろされているのが現状。


「キュルキュルって…ビデオテープの巻き戻しと同じ音じゃん。
おにいのトキメキって、そんなもん?」


妹は鼻で笑った。


「DVDの時代にビデオテープってとこがおにいらしいよね~。」


ぷぷぷ、と笑って妹は、崩れている俺の背中を踏んだ。
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