魔王に甘いくちづけを【完】
皆の関心を集めている渦中の人。
セラヴィ王は、城の中ほどにある謁見の間で玉座に座っていた。
ひじ掛けに肘を預け、頬杖をついて、見た目はとても退屈そうに見える。
眼前には跪く大臣が二人。
手元の床には、えんじ色の布で包まれた平たい箱が置かれている。
時候の話から始まり王の体調伺いまでする挨拶は常に長く、いい加減うんざりしたセラヴィ王は、手をひらひらさせて大臣の話を途中で遮った。
二人の用事は何なのか、大抵察しはついていた。
「・・・挨拶はもういい。雨が続いてるのも分かっている。明日には止ませるから安心しろ。で、本題はそれではないだろう。用件を早く言え」
「はい、本日は、セラヴィ様好みのレディの絵姿を持参いたしまして御座います」
「ふむ―――絵姿、か」
やはりな、と心の中で呟く。
皆自分の息のかかった者を妃にと薦めてくる。
自分の身内が妃になれば、執政を牛耳ることも可能だからだ。
私腹を肥やし、我が物顔で権力を振るう。
恐らくこの大臣もその口だろう。
それを避けるため、代々王は国外から妃を迎えてきたのだ。
私とて――――
「はい、左様で御座います。お好みを調べて持参しました故、今度こそお気に召されるかと存じます」
「・・・それを私が見ると思うのか?何度も言うが、私は貴様らの欲にまみれた縁故になど縋るつもりはない」
「また、その様なことを―――兎に角、どうか絵姿だけでも。ご覧いただければ、我らはそれで満足で御座います故」
二人の大臣が互いに目線を交わし笑顔で頷き合う。
大臣の一人がえんじ色の布を取り払い、セラヴィ王の前に進み出て「どうぞお改めを」と恭しく差し出した。
余程自信のあるレディのものなのか、不機嫌そうな顔をしたセラヴィ王の前でも、大臣達は笑みを絶やしていない。
それは、にこにこと言うよりも、にやにやといった方がぴったりくる笑いだ。
「・・・痴れ者が」
漆黒の瞳が真紅に染まり、平たい箱の中身を睨んだ。
途端に・・・ぽぅ・・・と炎が上がり、絵姿のみを塵も残さずに一瞬で焼き尽くした。
箱には、絵姿が乗っていた部分にもどこにも焼け焦げた跡はない。
そっくり絵姿だけをセラヴィは燃してしまったのだ。
セラヴィ王は、城の中ほどにある謁見の間で玉座に座っていた。
ひじ掛けに肘を預け、頬杖をついて、見た目はとても退屈そうに見える。
眼前には跪く大臣が二人。
手元の床には、えんじ色の布で包まれた平たい箱が置かれている。
時候の話から始まり王の体調伺いまでする挨拶は常に長く、いい加減うんざりしたセラヴィ王は、手をひらひらさせて大臣の話を途中で遮った。
二人の用事は何なのか、大抵察しはついていた。
「・・・挨拶はもういい。雨が続いてるのも分かっている。明日には止ませるから安心しろ。で、本題はそれではないだろう。用件を早く言え」
「はい、本日は、セラヴィ様好みのレディの絵姿を持参いたしまして御座います」
「ふむ―――絵姿、か」
やはりな、と心の中で呟く。
皆自分の息のかかった者を妃にと薦めてくる。
自分の身内が妃になれば、執政を牛耳ることも可能だからだ。
私腹を肥やし、我が物顔で権力を振るう。
恐らくこの大臣もその口だろう。
それを避けるため、代々王は国外から妃を迎えてきたのだ。
私とて――――
「はい、左様で御座います。お好みを調べて持参しました故、今度こそお気に召されるかと存じます」
「・・・それを私が見ると思うのか?何度も言うが、私は貴様らの欲にまみれた縁故になど縋るつもりはない」
「また、その様なことを―――兎に角、どうか絵姿だけでも。ご覧いただければ、我らはそれで満足で御座います故」
二人の大臣が互いに目線を交わし笑顔で頷き合う。
大臣の一人がえんじ色の布を取り払い、セラヴィ王の前に進み出て「どうぞお改めを」と恭しく差し出した。
余程自信のあるレディのものなのか、不機嫌そうな顔をしたセラヴィ王の前でも、大臣達は笑みを絶やしていない。
それは、にこにこと言うよりも、にやにやといった方がぴったりくる笑いだ。
「・・・痴れ者が」
漆黒の瞳が真紅に染まり、平たい箱の中身を睨んだ。
途端に・・・ぽぅ・・・と炎が上がり、絵姿のみを塵も残さずに一瞬で焼き尽くした。
箱には、絵姿が乗っていた部分にもどこにも焼け焦げた跡はない。
そっくり絵姿だけをセラヴィは燃してしまったのだ。