魔王に甘いくちづけを【完】
エピローグ
澄み渡る空に祝砲の矢が放たれる。
鐘が鳴り響き、鳥が飛び立ち、街には祝いの飾りが付けられ、かがり火がそこかしこにともされていた。
「ユーリーアさんっ!ぁ・・・っけない・・・ユリアナ様、お支度は整いましたか?」
リリィがひょこんと顔を見せて舌を出してごめんなさいと謝るので、笑顔で答えて見せた。
「えぇ、十分よ。まぁ、リリィ、貴女も可愛いわね」
「うん、ザキと久しぶりに会えるんだもん、おめかししなくちゃ。他のヒトに目移りされたら困るもん。あ、今日はね、ジークさんもフレアさんを連れてくるみたいだよ。ユリアさん、じゃなくて・・・えっと、ユリアナ様も皆に逢うの久しぶりでしょう、良かったね、嬉しいでしょう?だけどね、ラヴル様がやきもち焼いちゃうかもしれないから、会っても静かにしてた方がいいよ。あ、これ、こっちに置いとくね」
お喋りしながらも片付け忘れられていたアクセサリーを見つけて、宝石箱に仕舞ってくれる。
リリィは、ラッツィオの侍女見習いを卒業して、今は立派なロゥヴェルでの高等侍女だ。
今日は、お披露目パレードの日。
リリィは私の補助役と称し、一緒に馬車に乗ってくれるらしい。
「ありがとう、リリィ。ねぇ、名前のことだけど、無理して呼び直さなくてもいいのよ?今まで通りで構わないわ」
だって、命名したラヴルでさえ間違えることが多いのだもの。
指摘してあげると何ともバツの悪そうな顔をするのだ、思い出してクスクスと笑う。
・・・コンコン・・・
「支度は出来たか、行くぞ――――」