魔王に甘いくちづけを【完】
「我々と違って、この方の毒の消し方は独特ですから。じゃ、レディまた後で。ラヴル様、後程に―――」


―――独特?毒を消す?何の・・・・?


「あの、待って―――」


助けを求めるように見つめるユリアを残し、ヤナジはベッドの上に片足を乗せてユリアに覆い被さろうとしているラヴルに向かって、丁寧に頭を下げた。


「全く、妙なところに気を使うものだ・・・体に障るというのに・・・」

などと、ぶつぶつ言いながら部屋を出ていった。


「ラヴル、一体何をするんですか?・・・待って・・・。お願い、何をするのか教えて」

「ユリア、そんなに不安そうな顔をするな。直ぐに済む・・・。それに、さっきから言ってるだろう。毒を消すと。早くせねば、このままではあいつの毒がまわって厄介なことになる」



ますますラヴルの眉間に皺が寄せられていく。

不機嫌そうにしながらも、触れてくる手はとても優しくて。

だから、抗おうと思っていた心がクタッと折れてしまう。

強く逆らえなくなる。



「動くな」



両手を長い指で動かないように絡め取られ、封じられる。ラヴルの顔がどんどん迫ってくる。覚悟して瞳をぎゅっと閉じると、唇が頬に触れた。


あつい・・と感じた途端、あたたかい気のようなものが体の中に流れ込んできた。

それが徐々にゆっくりほんわり体の隅まで広がっていく。

ラヴルの柔らかな気。

それが爪の先や髪の毛一本までにも行きわたる。


体の中がラヴルで満たされていく。

今まで感じていた鉛のような重さやクラクラする感覚が消え、すっきり爽快な気分になった。



頬から唇を離した漆黒の瞳が、様子を窺うようにユリアの瞳を見つめていた。

いつもの輝きが衰え、少し疲れてるように見える。



――毒を消すってきっと大変なことなんだわ。

ヤナジも体に障ると言っていたし。

そんなことをして、ラヴルは大丈夫なのかしら――


心配になりじっと見つめていると、キュッと結ばれていた唇の口角が少し上がった。



「ユリア、楽になったか?」


「・・・あの・・・ラヴルは大丈夫なんですか?疲れてるみたいですけど」


「あぁ、少し疲れたが、暫くすれば元に戻る。ユリアは私だけのモノだ。私以外の男の血が入ると、それは毒になる。本来は手っ取り早く血を飲ませるか体を繋げるんだが、それだとユリアに負担がかかるからな・・・・。それとも・・・ユリアはそっちの方が良かったか?」


< 62 / 522 >

この作品をシェア

pagetop