黒姫
様々な疑問が頭をよぎる。
でも、このままここにいたらあのフードの男が来るかもしれない。
拐われたのだったら、早く警察に助けを求めなきゃ…。
そう思ってスカートのポケットに手を突っ込む。
案の定、そのポケットの中にはケータイがあった。
(取られてなくて良かった…。)
目的の物があってホッとした。
手の中に収まっているのは、いつも持ち歩いているピンク色の折り畳みケータイ。
そのケータイを開き、110を押そうとしたら……画面の左上にある電波が〈圏外〉を表示していた。
「嘘でしょ?圏外って…。」
連れ去られた場所が、もしかしたら電波の届かない山中なのかもしれない。
はぁ…、とため息が出てしまう。
けど、ここにいたら危ないと思う。あの男が来たら…今度こそ殺されるかもしれない。
そう思うと急に体が震えてきた。
「とりあえず、歩いていたら民家とか見えてくるよね!!」
震えを払う為に勢いよく立ち上がり、深呼吸する。
木や草の匂いを鼻にいっぱい吸い込んだお陰か、ちょっと楽になった。
ぱんぱんっと、スカートとか髪に着いた葉っぱを払い落とす。
そして、満月に照らされている辺りを見渡し……私は前に足を進めた。