黒姫
私の視界一面に広がるのは、月の光に反射されている大きな湖だった。
風が僅かに吹いているのか、湖の水面がキラキラ光って見える。
「わぁー……湖だ。」
その綺麗な湖に目を奪われ、思わず声に出してしまう。
ふと、急に喉の渇きが出てきた。
湖に落ちないように気を付けながら、縁ギリギリまで進んでみる。
しゃがんで、その湖の水をそっと手にすくってみた。
「………うん、臭くないし…少し飲んでも大丈夫だよね。」
くんくんとかいで変な臭いが無い事を確認して、恐る恐る口に含んでみる。
冷たい水が私の口の中を潤してくれた。
変な味はしない。…むしろ、凄く美味しい。
喉の渇きもあって、また一口…更に一口飲んだ。
そして、そのまま顔をパシャパシャ洗った。冷たくて気分が引き締まる。
ついでに、さっき水溜まりに突っ込んだ右足も洗った。
「ふぅっ。」
靴下を雑巾のようにギューッと絞り、ローファットも振り回して水気を飛ばした。
まだ濡れているけど、泥水でぐちゃぐちゃになってた時よりはマシだと思う。
さて、また歩かなきゃ…。
そんな事を思い、まだダルさが残る体を立ち上がらせる。
立ち上がって顔を上げたその時……。