黒姫
…ガサガサ……
ビクッ!!
「えっ……な、何?風じゃない…よね?」
何か……背後の草むらから音がする…。
少し音は遠いけど、これって…。
ドキドキと早鐘を打つ胸元をギュッと握り、音がする草むらを振り向く。
目を凝らしてみても、まだ影とかは見えてない。
ガサガサ……ガサガサ…
「……っ?!さっきより近付いてる!!」
少しずつではあるが、その音は確実にこっちへ近付いてくる。
(隠れる?いや、逃げなきゃ…。)
焦って辺りをキョロキョロと見渡しても、後ろには湖、左右には足首までしかない草むら。
(ど、どうしよう……。)
どんどん近付いてくる音。
逃げ場が無い焦りからか、心臓の音が凄くうるさい。
(…湖へっ!!あっちの岸にたどり着けれればきっと!!)
そう決断するのは早かった。
もしかしたら…私を追って、あの黒フードの男が来ているのかもしれない。
意を決し、再び湖に対面する。
数十メートルあるだろうか。あちらの岸にたどり着けれる程、泳ぎの自信は無いが……あの男に捕まるよりはマシだ。
ギュッと唇を噛み締め、急いで湖へと身を沈める。
冷たい湖が一気に私を包む。
体温が急激に下がって、体がカタカタと震え出す。
……けど、それに構っている余裕は無い。