黒姫


「…はっ……あなた……だれっ?!」


私も負けじと白いフードの男に向かって叫ぶ。
足を絶えず動かしてる上に、制服が重いせいで息が苦しい。

でも、私の問いは聞こえてるはずだ。















「いいから…こっちへ来い!!」

白いフードの男は馬から飛び降り、私の質問には答えず再び叫ぶ。


深くかぶっているせいで、相手の顔は見えない。





















(もしかして…あの黒フードの仲間?!)

急に恐怖が私を支配する。

焦った私は体を反転させ、男のいる岸とは反対の方へ再び泳ぎ出す。






















「……ッ……チィッ…。」

舌打ちと共に、バサッと何かを脱ぐ音。
そして、ザブンッ!と水音も聞こえてきた。




(まさか…追い掛けてくる気っ?!)

振り返えらなくても分かる。
ジャブジャブと水音が近付いてくるから、あの人が追い掛けてきてるって…。










「ゃ……いやぁっ!!」





……怖い怖いこわいっ!!

誰か…誰かっ!!!
お父さん…お母さんっ!!!





殺されるかもしれない恐怖心や、早くあっちの岸へ行かなきゃいけない焦燥感が私をいっぱいにする。

必死に両手や足を動かして泳ぐけど、後ろからどんどん近付いてくる。
















そして……グッと、力強い何かに肩を引っ張られた。

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