黒姫
「いやぁ……いっ…やぁっ!!!」
男にから逃れる為に、バシャッバシャッと荒波を立てて抵抗する。
でも、どんなに体を捩っても肩から外れない。それが私の恐怖心を煽る。
そして、体が男側へグルッと回転した。
回転した…よりも、強制的に体を向かされた。
腰にもグッと手を回され、固定されてるから身動きが取りづらい。
「離してっ!!」
顔を上げず、手や足をバシャッバシャッ動かして抵抗してみる。水が跳ねて自分の顔にかかった。
けど、離れるどころか更に力が加わる。
「……落ち着くんだっ!俺はお前の敵ではないっ!!」
頭上から男の声が降ってきた。
そして、いまだに抵抗しようと暴れる私の手を掴む。
「やめ……離してぇっ!!」
捕まれている右手が使えないから、空いている左手で相手の胸元を拳でドンドンッと叩く。
でも、急にグッと腰を引き寄せられて相手の胸元に顔を付ける体制になってしまった。
「シーッ……大丈夫だ。お前を傷付ける者はここにはいない。…大丈夫だ。」
怖くてパニックになっている私を落ち着かせる為か、男は私の耳元で静かに囁いた。
「……大丈夫だ。大丈夫。」
そんな言葉を何回も囁く。
拘束していた手を離し、私の背中をぎこちなくポンポンと叩いてくれている。