黒姫
怒った男の人の声が私の名前を呼ぶ。思わずガバッと顔を上げた。
急に顔を上げたからか、辺りを覆う白い光に眩しくて目を細めてしまう。
心なしか、肩やら首が痛い。
そんな私の目の前にあったのは、青い水玉模様のネクタイ。
少しシワシワなのは目の錯覚じゃないよね。
「たーけーうーちーまーなー?」
頭上からさっきと同じ声が降ってきた。
何だか、怒りを押し殺してるせいか私の名前を呼ぶ声がさっきより低い。
背中に冷たい物が流れた気がした。
…ううん、気ではなく本気で流れたね。
眩しさに慣れてきた目を、ネクタイに沿って恐る恐る上げてみる。
そこには、目を吊り上げ頬をヒクヒクさせているネズミ……もとい、数学の先生がいた。