黒姫
扉を開けた先は、これまた広い部屋だった。
足元には白いふわふわの絨毯。
裸足だから少しくすぐったい。
パチパチッと音が聞こえてきて、反射的にそっちを見ると暖炉があった。
赤々と燃える炎が、この部屋を暖めてくれているのが分かる。
ガラスの窓も凄く大きい。
窓から差し込む日の光が、優しく室内を照らしてくれていた。
「どうぞこちらへ。」
タオルの隙間からキョロキョロと見渡していると、風呂場より離れた場所から私を呼ぶ女の人。
そちらへ視線をうつすと、4人は座れるだろう黒いソファーが置いていた。
その周りに同色のソファーがいくつかあって、中央に灰色のテーブルがある。
女の人はソファーの横に立っていて、こちらを見ていた。
「こちらへお座りください。今、温かいお茶をご用意致します。」
再び促されて、私はソファーへと向かった。
女の人はメイドのような格好をしていた。
顔を上げると首の痣が見えてしまうかもしれないと思い、顔を見ないままソファーの端に座った。
カチャ、と目の前のテーブルにカップが置かれた。
湯気が出ていて、何やら甘い匂いがする。
紅茶だろうか?
「えっと……いただきます…。」
タオルを押さえている手とは逆の方でカップを持ち上げ、ゆっくりと一口流し込む。
それは、ハチミツとミルクがいっぱい入っている紅茶だった。
知らない内に強ばっていた体から、少し力が抜ける。
程よい熱さと甘い味に、ホッと安心できた。
そして、最後まで紅茶を飲み干し、カップをテーブルの上に戻す。
(そう言えば、あの外人さんがいない…。)
キョロキョロと再び辺りを見渡すも、探している人物は見当たらなかった。
(この際だから、あの外人さんじゃなくて女の人に事情を話して、警察を呼んでもらおう。)
そう決めて、女の人に向かって口を開く。
その時……。