黒姫
ガチャッと、扉が開く音が聞こえた。
反射的にそっちを見ると、そこにはあの金髪の外人さんがいた。
後ろ髪は長いのか、一つに結った髪を肩に流している。
顔にかかる前髪は、片方だけ耳にかけている感じ。
…扉からソファーまで距離があるから、ちゃんとは見えないけど……。
そして、地面すれすれまで長い白のマントのような布を羽織っていた。
…………マント…?
「…………。」
私は無言でその姿をジッと見てしまった。
でも、こちらへ近付く外人さんに気付いて、慌てて視線をカップへと移す。
「「…………。」」
ドスッと、外人さんが私の目の前のソファーに座った。
私から見えるのは、その外人さんの黒いズボンだけ。
お互い何も喋らないから、無言が痛い。
メイドさんが、何かの準備をしてくれているカチャカチャとした音が唯一の救いだった。
(……電話しなきゃ…。黒フードの男…警察を…。)
数分間の沈黙の後、当初の目的を思い出した私は、顔を外人さんに向けて口を開いた。
「あ…の……警察を呼んでいただけます「王、入りますよ!!」……。」
バンッ!!と勢いよく開いた扉と共に、少し焦りが混じった若い男の人が入ってきた。
警察を呼んでもらおうとしたのに、途中で遮られてしまうなんて…。
ショックでその男の人に目をくれず、自分の足元に視線を落とす。
はぁ…と、無意識にため息が出てしまう。
その若い男は、ソファーがあるこちらへとやや小走りで向かってきた。
「………ロゥファ。焦る気持ちは分かるが、今は無事に彼女を保護できたんだ。落ち着け。」
荒ただしく入ってきた人物に、外人さんは戒めるように言う。
ロゥファさんと呼ばれる男はソファーへは座らず、外人さんの隣へ立ったようだ。
「この方が……?」
「…あぁ。見ればお前にも分かるだろう。」
足元を見ているせいで、目の前のやり取りは会話しか聞こえない。
でも、きっと二人は私を見ているだろう。
……ちょっと居づらい。