黒姫
(見られてるのは…何か嫌だ。)
口元をギュッと引き締める。
知らない人にジロジロと見られるのは、あまり心地良いものではない。
早くこの状況を打破したくて、私はもう一度チャレンジしてみた。
「……あの……警察を呼んでもらえませんか?」
俯いた状態だっけど、今度は最後まで言えた。
「私…公園で黒いフードを被った人に殺されそうになって…。気が付けば山の奥で、ケータイが圏外になっちゃってたから…警察に通報できなくて。」
外人さんとロゥファさん、メイドの女の人は無言で私の話を聞いてくれていた。
空いている手でワンピースをギュッと握り、緊張したまま話を続ける。
「あっ……でも、電話を借りれたら私が警察に通報します。」
そこまで言い切った私は、頭をぺこっと下げる。
「………ケイサツ?ケータイ??」
意味が分からないとでも言うかのように、ロゥファさんは口を開いた。
「え……?」
思わずロゥファさんを見上げる。
タオルが丁度目にかかっていた為、ロゥファさんの顔は見れなかった。
「それに……デンワ?」
追い討ちをかけるかのように、ロゥファさんは疑問を飛ばす。
「…っ……ここ、東京…日本ですよね?」
急に不安になった。
いつの間にか、外国へ連れてこられたのかもしれない。
でも、言葉は通じるのに…どうして警察やケータイが通じないのか。
「………ニホン…トーキョー?ここは、パーメントールですよ?」
その言葉を聞いて、サァーッと血の気が引くのが分かる。
ソファーを勢いよく立ち上がり、窓へと走りだす。
後ろから制止の声が聞こえたけど、そんなのに構ってはいられない。