黒姫
窓に駆け寄り、そこに広がる景色を見た瞬間…私は声を失った。
(なに……これ…っ。)
一番最初に見えたのは、大きくそびえる黒い山。遥か奥にそれはあった。
この部屋は高い所にあるためか、グルッと見渡す事ができた。
黒い山から茶色の大地がずっーっと手前に伸びてきていて、灰色の壁のような物に繋がっている。
家なのだろうか?
灰色の壁の内側から、赤レンガの屋根やテントがいっぱい並んでいる。
その周辺には、見た事もない服を着た人達が沢山にいた。
そして、私の真下には…鎧を着た人が列を作って歩いている。
「……ここ…どこなの…?」
漸く出た私の声は掠れていた。
膝に力が入らず、ペタッと地面に座り込む。
「……ここは、パーメントールだ。」
低く、よく通る声が上から降ってくる。
いつの間にか外人さんが私の隣に立っていた。
「パーメン……トール?」
震える声で復唱してみる。
教科書にも出てきていない名前だ。ましてや、聞いた事もない名前…。
何だか、だんだんと視界が薄れてきた。
「俺は…パーメントール国王、レオン・ナーティアスだ。」
そんな声と共に、スッと手が差し出される。
掴まって立てと言う事だろうか?
でも、状況が付いていけない私は、その手を取る事はできなかった。
「…お前の名前は何と言う?」
私の手をグッと掴み、無理矢理立たされた。
その拍子で、頭のタオルが床に落ちてしまう。
タオルが無くなった事によって、外人さんの顔がはっきりと見えた。
澄んだ青い瞳が、真っ直ぐ私を見詰めている。
「私は……竹内…の…あ。」
自分の名前を言い切った瞬間、急に体の力が抜けて……私はそのまま意識を失った。