黒姫
数分後………
「うっし!!」
浴室にある鏡に反射する自分の姿を見ながら、希愛は気合いを入れた。
制服は洗われたのか、汚れやシワが一つも無かった。
勿論、今履いているローファーも新品の様にピカピカだ。
そして、希愛の首元には白い包帯が巻かれてあった。
(…誰かが手当てしてくれたのかもしれない。)
希愛の首元で綺麗に巻かれている包帯。
寝ていても、その形は崩れなかったらしい。
シャツのボタンを一番上まで閉めても、首元の包帯は全然隠れてくれなかった。
諦めてシャツのボタンを二つ開ける。
その包帯を取って痣を見ようかと思ったが、指の形がくっきりと残っていた事を思い出すと…鳥肌が出てくる。
(やっぱり、包帯を取るのは止めよう…。)
一気に落ち込んだ気持ち切り替えるために、胸元の赤いネクタイを軽くキュッと上に引き上げる。
そして、最後に寝癖が無い事を確認してから浴室から出た。
(さて。着替えたのは良いけど……この後、どうしよう。)
とりあえず窓辺まで来た希愛は、目の前に広がる景色を見て項垂れた。
さっきまでこの部屋を出るつもりだったが、いざ外の景色を見ると、その意気込みが急に無くなってしまった。
(鎧とか着てる人いるし……遠くに見える人達、皆外人っぽい…。)
ガシャガシャと、今にも金属の音が聞こえてきそうな鎧の人達が真下にいた。
そして、遠くにいるのは見慣れない服の人達。
髪の色も、緑や水色など様々だった。
ふと、希愛は意識を失う直前の事を思い出す。
(……………そう言えば、ここはパーメントールって言ってたよね?)
ロゥファと呼ばれる男と、金髪のレオンが「パーメントール」と呼んでいたのを思い出した。
でも、《パーメントール》って言う国は、今まで一度も聞いた事が無かった。
(パーメントールってどこなのよ…。しかも、レオンさんって言う人は国王って言ってたし…。)
もしかしたら、ちゃんとそう言う国があるのかもしれない。
ただ単に、私が忘れているだけなのかも…。
希愛は頭を必死に使い、窓の前に立ったまま《パーメントール》と言う国の名前を思い出そうとした。