黒姫
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夕焼けで教室を赤く染めてる中、私は窓際の机の上に突っ伏していた。
腰まで伸びている黒髪が、教室の窓から入ってる少し冷たい風に揺られている。
「どんまい、希愛。」
慰めてくれてるのか、クセ毛の無い私の頭を隣でポンポン叩いてくれるのは親友の和音。
「和音ー。私……何であいつの授業で寝ちゃったんだろ。」
「よりによって数学ネズミの授業…しかも、本日最後の6限目でねぇ。希愛、本気で寝ちゃってるしさぁ。」
「高校2年生にして初めての嫌な思い出ベスト1だよ。しかも、これ。」
突っ伏したまま、私の枕代わりとなっている紙を指差す。
その紙には『今日の6限目では寝てしまってスミマセンでした。次からは…』から始まっている文章。
そう、(動きがネズミっぽい)数学教師への忌まわしき反省文。
あの後、ネズミからめっちゃ嫌みやら何やら言われたなぁ。
怒った顔も心なしかネズミに見えたし。
……いや、私が寝たのが悪いんだけどね。
「罰として、夕方5時30分までに反省文を書いてこいってさー。」
反省文の最初までは書けたんだけど、それよりも先が思い浮かばないから進まない。
カチカチ…と、使わないのに無駄にシャーペンの芯を出してみる。
「適当で良いんだって。それよりも、今日スーパーの特売日じゃなかった?牛乳と卵は良いの?ついでにパンも。」
いつまでも伏せている私を見て、苦笑混じりに問いかける和音。
「………っ!!」
そんな和音の言葉に、本日2度目のガバッと起き。
慌てて時計を見れば、針は5時24分を示していた。
しまった!!スーパーの特売日はいつも5時40分からだった!!
スーパーまでダッシュで行けば、6分で着くよね…。
……って事は、後10分以内に提出含め全部終わらせなきゃ!!
突っ伏した時に出来た僅かな前髪の寝癖をわしゃわしゃと直す。
眉毛辺りで切られている私の前髪は視界を覆わない。
けど、寝る体勢が変だとすぐに寝癖がついてしまう。
そんな私を隣で可笑しそうにクスクス笑う和音に「もう少しで全部終わるから」と伝え、私の手元にある紙と再対決をした。