黒姫

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久しぶりに胃へ食べ物を入れるという事もあり、メイドは希愛の消化を考慮してか、柔らかいパンが浸った温かいスープを準備してくれた。


空腹でお腹が悲鳴を上げていた希愛は、それを一気に平らげる。






食べ終わった後、空のお皿を片付けようとしたら「それは私の仕事ですので。」と、メイドにやんわり断られてしまった。







「……何から何までありがとうございます。服もお借りしちゃって…。」


皿を下げた後、馴れた手つきでお茶を準備するメイドを見上げながら、希愛は申し訳い気持ちでいっぱいになる。



「私の仕事ですので、どうかお気になさらないで下さい。」



ふわっと柔らかく微笑むメイド。
その面影が……何となく、親友の和音に似ていた。

笑った時の顔や雰囲気が、和音を思い出させる。



そんな事を思っていた希愛だったが、次のメイドの言葉に耳を疑う。














「それに…黒姫様に、そのような事をさせる訳にはいきませんわ。」






















(………黒姫?)



カチャ、と目の前に置かれたカップに目をくれず、希愛は首を傾げた。





「えっと……人違いじゃないですか?私の名前は《黒姫》って名前じゃなくて、竹内希愛って言います。」



きっと、誰かと間違えてるだけなんだろう…。



そんな思いで自分の名前を言う希愛だったが、メイドは微笑みを浮かべたまま首を横に振った。





「……いいえ、貴女様は《黒姫様》ですわ。」


そう言い切るメイドは、どこか嬉しそうだ。



「詳しい事は、我等が王…レオン様がお話になるかと。夕刻にはお会いする事が「待ってください!!」」



ガタッと、思わず立ち上がる希愛。
メイドの話を遮ってしまって申し訳ないが、人違いされたままでは困る。









「人違いですよ!私は、《黒姫》って言う名前じゃありません。」


必死でメイドに伝える希愛。

そんな希愛の姿に、メイドは驚いた顔をしていた。







「私は竹内希愛です。その…黒姫さんと言う方とは違います。」


立ち上がった状態のまま、希愛は首を横に振った。


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