黒姫
「では、この国に言い伝わる話を致しましょう。
…あ、紅茶を飲みながらでも構いませんから。」
そんな希愛に、フッと笑みを深くするロゥファ。
紅茶を進められたが、話の続きが気になる希愛はそれに手を付けず、ただロゥファを見つめていた。
そして、ロゥファの口から言葉が紡がれた。
《黒姫》
それは、生まれし時より漆黒を身に纏い、力を有し者。
その存在は、再生と破壊を司る者なり。
その存在は、繁栄と終焉をもたらす者なり。
その存在は、この世界『パーメントール』に大きな変化をもたらすであろう。
物語を語るように、ロゥファは静かな口調で言った。
「ノア様は…その言い伝えに出てくる《黒姫》なのです。」
自分の耳を疑った。
……今、この人は何て言った?
「ノア様………貴女は、《黒姫》なのです。」
聞き間違いではなかった。
ロゥファは、同じ事を二度言ってくれた。
先程よりも力強く…。