黒姫
「お前の……《黒姫の力》を奪いにきたんだろう。」
「……《黒姫の力》…?」
レオンが発した言葉の中に、知らない単語が出てきた。
希愛はただ首をかしげるばかり。
「《黒姫の力》と言うのは、特殊な能力だと思ってください。」
横からロゥファが助け船を出すように、言葉を繋げた。
「その能力ですが…文献によれば『治癒の力』であったり、『滅びの力』であったりします。
…ノア様は、この能力に身に覚えは御座いませんか?」
(……そう言われても、私は普通の人間だよ…。)
どこにでもいる普通の女子高生。
漫画のように空を飛ぶ事もなければ、ゲームのように魔法を使う事はできない。
「身に覚えが……。」
…ありません。
そう言葉を繋げようとした希愛だったが、公園での出来事を思い出してハッとした。
(そう言えば…殺されそうになった時、白い光が急に出て…男の人と母さんに似た声が聞こえたよね。
それから、私を守るように白い光の筋がふわふわって浮かんでた…。)
急に黙る希愛。
それを見逃さなかったレオンとロゥファは、お互い顔を見合わせた。
「心辺りがあるんだな…?」
言え、と言わんばかりに希愛を見るレオン。
その眼差しは痛い位に真剣だった。
希愛は乾いた唇を少し舐め、公園であった出来事を説明すべく口を開いた。